(コラム63)

色の雑談:白黒(Black & White)&トーン(Tone)

(五十嵐吉彦 2021年3月1日)

いままでカラーの世界、即ち太陽光で我々が見える可視光線の色彩の世界について述べた。
今回コラムでは無彩色の世界で色を持たない白黒(Black & White)、及びトーン(Tone)について述べてみよう。昔は写真もコピーもTVも白黒であった。いまではカラーが当たり前であるが、カラー化が急速に進んだのは昭和39年(1964)東京オリンピック以降の1970年頃からであったと思う。
昔の白黒写真、即ち銀塩フイルムでのプリントはセピア色になっているのもあるが、画像はしっかり残っており、これはこれで素晴らしく昔の記憶が蘇ってくる。写真の価値は今も変わらず記録としての価値は大きいが、いまはデジタルカメラ+スマホ時代で誰でもが簡単に瞬時にカラー画像がいくらでも出来るので、1枚の写真の価値は下がったがコミュニケーションツールとして爆発的に普及し、今では生活必需品となり社会を変えてしまった。

一方絵の世界は小生の小学生の頃から水彩絵具もカラーであったので、色彩があるのが常識であったが、白黒だけでの表現作品には水墨画や人物デッサン、また簡単な線スケッチはモノクロだ(白黒調やセピア調の単色のこと)。白黒は明度差、即ち色がない白から黒までの段階であり通常明度差とかトーンというが、水彩スケッチを描く場合の重要な要素は構図、線スケッチ、色彩、加えて光と影のトーンが大変大切と思っている。そして作品構成でこのトーンのバランスが重要であり、画面全体が淡すぎてもいけないし、濃すぎてもいけない。トーンの幅、即ち明度の幅があって、そのトーンバランスがよければいい作品となる。

人生明るい時代もあれば、暗い時代もある。今はコロナ禍の時代でありトーン巾の中では暗い側〜グレイ側に寄っているが、中期のスパンで見れば、明るく輝く白側のトーンの時代にまた必ず戻ると思う。
明るい光と暗い影、色彩の中にその明暗のトーンを見つけ、輝く作品を創っていこう。

大倉山記念館・横浜
大倉山記念館・横浜

*上記作品はトーン巾があり、白黒にしても作品となる。<大倉山記念館・横浜/F4>


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