(コラム51)

写真を参考に風景スケッチの注意点

(五十嵐吉彦 2020年4月25日)

現在コロナウイルス対策にて緊急事態宣言が出され外出自粛の中、風景スケッチの場合 ごく近所で人のいない所でのスケッチをするか、室内にて写真を参考にスケッチをするのは、描く経験を重ねる事になり良いと思う。ただ、写真を参考にして風景水彩スケッチを描く場合の 注意点と小生見解を述べよう。
小生は昔から講座にて風景スケッチ画は「写真を補助手段として活用するのは良いが、 写真に頼り過ぎてはいけない。現場で描くのが原則。」と言っている。写真を利用するのは、 実際に描いた現場を再度描き直すとか、光とカゲをチェックするとか、動いている人物など 点景を参考にするのは写真を補助手段として活用しているので良い。しかしながら、いつも 写真に頼り、現場で描く努力をしないのは本来のスケッチではない。また自分で撮った写真を活用するのはいいが、 雑誌に載っている写真や絵ハガキの写真から描くのは著作権があるのでこれもよくない。利用する写真は自分が現場で撮って、その現場を知っている事が望ましい。
実際、「人間の眼」と「カメラの眼」との違いがある。現場で描いたスケッチは「人間の眼」で捉えた風景であり、 3次元の立体風景を自分自身の眼を通して2次元の平面スケッチブック上に立体的に描く努力をしたスケッチ作品である。 一方写真は『カメラの眼』であるレンズの助けを借りて3次元の立体風景を忠実に2次元の平面に直してくれた写真である。 この為写真の風景は、人間の眼でみた風景ではなくカメラのレンズでみた精密風景であり、どうしても細かく見えすぎ、細かく描きすぎる傾向で、硬い作品となり、臨場感がなくなってしまう。
従って写真を活用して描く場合は、あくまでも現場を知っている風景で、現場でスケッチをしている気分を忘れないで描いてほしいと思う。

・下の作品は昨年5月にシェナ<イタリア>のカンポ広場の路地を現地で描いたもの。ただ歩いている2人の点景人物のみ写真を参考にした。

・水彩スケッチ(ペン彩画)/F4

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