( コ ラ ム 16 )

「風景の中の人物を描く考え方」

五十嵐 吉彦(2009.6.15)

小生が描く水彩スケッチ、特に風景スケッチには人物があまり登場しない。登場しても大きな人物や、人物がたくさん登場する作品は少ない。この考え方を少し説明しよう。
小生は風景スケッチには主として2種類あると思っている。それは下記の2種類です。
(1)歴史遺産や自然美や光を描く「感動風景スケッチ」
(2) 生活感や風俗感を出す「生活描写スケッチ」
上記(1)は歴史遺産の建物や、美しく感動する自然、また形がよい船、更に光の素晴らしさ等が主役であり、それらを描くだけで絵になり作品となる。したがって人物や車を 画面上大きく入れる必要性はない。人物を入れるとむしろ主役の美しさが壊れてしまう場合が多い。但し、その場合でも主役を引き立てる為、また建築物の大きさを見せる為、また何かを訴える為には、その風景の中に人物を入れた方がよい場合があるが、その場合は人物の大きさや、入れる場所を考える必要があろう。また、現場で描いている時に登場する人物は、静止人物ではなく、歩いている人物、即ち動いている人物が殆どであり、風景の中の点景人物と云えども描く為には練習が必要であろう。
一方、(2)の生活感、風俗感を出す「生活描写スケッチ」には、大きく人物を入れたり、人物をたくさん入れて描き、その現場の賑やか感や風俗感、また生活感、楽しさ感を出す必要があろう。この場合は人物を入れないと臨場感や、その場の雰囲気が出てこない。
小生作品でもパラソルのある風景で人物がいる場合はよく人物を入れている。

芸術写真を創る写真家の世界には、主として「風景写真家」、「生活・風俗写真家」、「報道写真家」、「ネイチャー写真家」などに区分されそれぞれ専門の道を持っている。
これを水彩スケッチで当てはめてみると、私の場合は「風景作家」であって「生活・風俗作家」ではない。何故なら部屋に飾る、部屋のインテリアとしてもよい風景スケッチとなると、やはり歴史的文化遺産や美しい自然を光を活かして爽やかに描き、観ていて飽きがこなく、部屋に適した作品、即ち品格ある風景水彩スケッチを目指している為である。
小生は昔は室内で静止画としての人物水彩や水彩クロッキーをよく描いたが、現在はもっぱら上記(1)の現場で描く感動風景スケッチを主テーマとしている。もちろん小生の講座では冬の寒い時期や雨の日は花などの静物を描き、適時点景人物を描く練習もしている。 小生のホームページに掲載されている作品には殆ど人物を入れる必要がない感動風景スケッチであるが、「トップページに掲載の<聖堂の一隅>」、「国内スケッチ作品5の<裏通り>」、「海外スケッチ作品5の<ローテンブルグの一隅>」には点景人物を入れている。
 上記の如く、小生の人物点景の考え方は風景主役の水彩スケッチの場合はあえて人物を入れる必要はないが、風景を引き立てる脇役として人物が必要な場合は、全体構図を考え点景人物の大きさや、描く位置などバランスをよく考えた方がよいと思う。  以上

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